Walter John De la Mare
(ウォルター・デ・ラ・メア)
(1873―1956) イギリスの詩人、童話作者
ウォルター・ラマルの名で詩集
『幼年期の唄(うた)』(1902)を発表、
小説『ヘンリー・ブロッケン』(1904)で文壇に
名を知られるようになり、幼年期の幻想を主題にした繊細で幽艶(ゆうえん)な作品を次々に発表した。
とくに有名な『孔雀(くじゃく)のパイ』(1913)は彼の叙情的・神秘的な傾向とことばの技巧が洗練の極致に達したものとして高く評価された。
だれか
だれかがドアをノックした。
たしかに、たしかにノックした。
耳をすましてドアを開け、
右や左を見たけれど夜のしじまをやぶるもの、
なにひとつ見つかりはしなかった。
ただカブトムシがかべを這い、森ではフクロウがないていた。
夜露がしずかにおりてきて、コオロギがひそやかに歌ってた。
けれども、だれがきたのかはどうしても、どうしてもわからない。
わたしのちっちゃな家の戸をノックしたのがだれなのか、
どうしても、どうしてもわからない。 『孔雀のパイ』
『孔雀のパイ』は、英国の子どもたちが親しんでいるデ・ラ・メアの詩に、絵本作家エドワード・アーディゾーニが絵を添えた、とても美しい詩集です。
なにしろ装幀が素敵で、カバーをはずした本体の表紙は、デ・ラ・メアの妖精詩にこの上なくふさわい、幻想的なイラストで彩られており、タイトル「孔雀のパイ」という言葉が、金色で箔押しされています。
また本文も挿画も、栗色のインクで刷られているところなども、たいへん趣深いです。
『孔雀のパイ』この本は、マザーグースにそのルーツを辿ることができる英国独特のナンセンス詩や、あたたかみある挿絵によって、日本の子どもたちに親しみやすい詩集に仕上がっていると思います。
やっはり、デ・ラ・メアの奥深い幻想世界は、子どもだけでなく大人にも、ゆっくり味わってほしい。
ナンセンス詩などは、やはり工夫を凝らした翻訳でも限界があると思うので、その楽しさ面白さは少なからず損なわれてしまっているでしょうが、 デ・ラ・メアの好むモチーフがいくつも散りばめられた多くの詩に、独特の不思議な、なぞに満ちた雰囲気、「幼な心の詩人」ならではの魅力が凝縮されています。
子どもにも面白く、またデ・ラ・メア作品の真髄を伝える詩として、一篇だけ(選ぶのに悩みましたが)ここに引用したいと思います。
なぞが、なぞのまま明かされない。ただ不思議として、そこにある。子どもの頃わたしたちは、そんな世界のなかに、たしかに生きていました。
そして彼は詩風をさらに枯淡に深化させ、『旅人』(1946)、『翼のはえた戦車』(1951)などの長詩では幻想が宗教的な次元にまで昇華されている。
『魔女の箒(ほうき)』(1925)などの幻想童話でも有名。G・グリーン、D・トマスなどという層の厚い人々が愛読し、影響を受けていることにも注目してよい ・・・ ・・・・ ・・ ・・ ・だそうです。
勉強させていただきました。 旅カラスⅢ世 suzukiより
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